太平洋国際商事仲裁センター和解規則
第1条: 規則の適用
1. 太平洋国際商事仲裁センターの和解規則(以後、「規則」と称する)は、各当事者が太平洋国際商事仲裁センター(以後、「PIAC」と称する)を介して当事者自身の紛争の和解を決めた商業活動における法的関係から発生した紛争もしくはそれに関係する紛争の和解に適用します。
2. 和解の際に本規則の規定のうち少なくとも一つを適用しないまたは変更することがベトナムの法の基本原則に反さない場合、当事者はかかる不適用または変更に合意しても良いです。
3. 本規則の規定のいずれかが紛争解決条項の準拠法の法的規制に反する場合、法的規制を和解に適用します。
第2条: 和解の開始
1. 和解を申し出る当事者はPIACに紛争の内容と自らの申し出陳述する申請書を送付しなければなりません。第18条における規定及び付属の和解料金表に基づき和解費用を仮払いします。
2. 和解申請書の受領および和解仮払い費用の受領から5営業日以内に、PIACは和解内容を通知し、第18条及び和解料金表に基づき和解費用の仮払いを請求する。通知を受領してから15日以内に、和解申請書受領した当事者はPIACに和解の受諾または拒否を通知しなければなりません。
3. PIACが和解に同意しない回答を受け取った場合、または上記15日間が終了した場合、和解申請書を拒否したものとみなされ、PIACは和解申請者に通知します。
4. 和解手続は、PIACが書面で和解受諾の通知を受け取り、和解申請書を受領した当事者の和解費用を仮払いした時に開始する。和解受諾は全て、電報、テレックス、FAX、データメッセージ、法律で定められているその他の書式といった書面または同等の形式で行わなければなりません。
5. 各当事者がPIACに和解申請書を共に提出する場合、和解手続はPIACが申し出を受領し、和解費用を仮払いした時から開始されます。
第3条: 和解人の数
当事者が和解人2名または3名で実施することに同意しない限り、和解人は1名とします。
第4条: 和解人の指名
1. 和解人の指名は以下の原則に基づいて行ないます。
a. 単独の和解人の場合、当事者はかかる和解人に合意する必要があります。
b. 和解人が2名の場合、当事者はそれぞれ1名の和解人を指名します。
c. 和解人が3名の場合、当事者はそれぞれ1名の和解人を指名する。当事者は、3人目の和解人に合意する必要があります。
(以下、1人以上の和解人を総称して和解人という。)
2. 当事者は
a. 指名を受けた者が規則を承諾することを条件として、PIACまたはリストに載っていない人物が提供する和解人リスト内から和解人を指名します。
b. PIAC所長に和解人の推薦を申し出ます。
c. PIAC所長に和解人を任命するよう申し出ます。 PIAC所長は、各当事者の仲裁人指名の申し出の受領日から15日以内に和解人を指名します。
d. 和解人の指名期限、またはPIAC所長に和解人の指名を申し出る期限は本規則第2条第4項および第5項に規定する和解手続の開始から15日です。
第5条: 和解人への陳述書の提出
1. 和解人は指名を受けた後すぐに、各当事者に対し紛争中の問題に関する自身の陳述書を提出するよう要請する。各当事者は同時に相手方当事者に陳述書を送付する必要があります。
2. 和解手続中いつでも、和解人は一方の当事者もしくは各当事者に陳述書及び紛争に関連する問題、または和解に必要だと思われる任意の資料を追加の証拠で提出するように請求できます。
第6条: 代表者とアシスタント
当事者は、和解手続中に代表者またはアシスタントを任命することができる。書面に和解手続中の代表者またはアシスタントであることを明記し、かかる者の名前と住所を相手方当事者および和解人に通知しなければなりません。
第7条: 和解人の役割
1. 自身の努力により、和解は独立かつ公平そして客観的に行い、当事者が紛争の和解に至るように支援するものでなければなりません。
2. 和解人は和解の根拠とするために当事者間の合意や業務慣習、事業活動、紛争に関連する背景を踏まえなければなりません。
3. 和解人は当事者の希望はもちろん紛争の性質と内容に適切であると考える方法で和解手続を進めることができます。
4. 和解人は和解手続中いつでも、紛争解決に関する提案をすることができる。かかる提案は必ずしも書面で作成したり、理由を添えたりする必要はありません。
第8条: 管理支援
当事者と仲裁人の申し出により、PIACは和解の実施日時と開催地の調整、管理面での支援、和解手続全体を通した和解人と当事者のアシスタントの任命において和解手続きの実施の便宜を図ります。
第9条: 和解人と当事者との間での取引及びやり取り
1. 和解人は当事者と直接会うことができ、またいかなる形式であっても当事者と取引及びやり取りを行うことができます。
2. 当事者間で和解人との待ち合わせ場所に関して合意しない限り、和解手続きの状況を考慮して和解者が待ち合わせ場所を決定します。
3. 当事者間の別段の合意がない限り、取引およびやり取りは全てベトナム後で行われる。当事者が別の言語での取引またはやり取りを申し出た場合、当事者は通訳とその精度について責任を負うものとします。
和解人、一方当事者または各当事者はPIACに通訳の手配を申し出ることができ、通訳の費用は通訳を依頼した当事者が支払う。両当事者が通訳を依頼した場合、通訳の費用は紛争当事者に均等に割り当てられます。
第10条: 情報開示
1. 和解人と各当事者との間のやり取りの書面、和解者が一方の当事者から受け取ったその他の情報は全て、和解人(上記内容が書面で作成されている場合)は相手方当事者に供述させる機会を設けるため、当事者に送付または通知をする必要があります。
2. 一方当事者が和解人にある情報を極秘であることを命じて教えた場合、和解人はかかる情報を相手方当事者に開示してはなりません。
3. 本条第1項に挙げた文書及び情報は共に、和解人が送付(文書の場合)するか、またはPIACに通知しなければなりません。
第11条:当事者の和解人との協力
両当事者は、陳述書・関連資料の提出および会議への出席に関する和解人の要請に応じることを含め、和解人と協力する責任を負います。
第12条: 紛争解決に関する当事者の提案
各当事者は自ら進んでまたは和解人の提案により、和解人に紛争解決に関する提案書を送付することができます。
第13条: 和解合意
1. 紛争解決の可能性があり両当事者間がそれを承認するかもしれない場合、和解人は和解合意書を自ら作成、編集するか、各当事者が和解合意書を作成、編集するのをサポートします。
2. 和解合意書に署名することにより、各当事者は紛争を終結し、民法規定に基づきかかる和解合意書に拘束されます。
第14条: 守秘義務
和解人、PIACおよび各当事者は、和解合意書を含む和解手続に関する問題全ての秘密を保持しなければなりません。
第15条: 和解手続の終了
1. 和解手続は以下の時点で終了します。
a. 当事者が和解合意書に署名した日
b. 仲裁人が支援に努めたが当事者間で和解合意に達することができず、和解による紛争解決ができないという和解人の書面発表日
c. 和解の終了を申し出る和解人に送付した一方当事者または各当事者の書面発表日。
d. 和解人の指名期日または和解人の指名申出期日。
e. 和解人の要請に応じた陳述書および関連資料を提出締切及びPIACが請求する和解費用の支払い期日の終了日
f. 和解手続の対象者である紛争中の一方当事者もしくは各当事者が 第16条第2項における規定に基づき仲裁廷又は仲裁裁判所で提訴を行った日
2. 本条第1項にあげた和解手続が終了となる場合、PIACは和解の終了について各当事者及び和解人に書面で通知しなければなりません。
第16条: 仲裁機関または裁判所
1. 和解手続中、紛争に仲裁や裁判を行わないことを誓約する当事者が和解手続の対象です。
2. 和解手続において、和解手続の対象である一方当事者または各当事者が仲裁機関または裁判所にて提訴する場合、和解が終了したものと暗黙のうちに了解されます。
第17条: 和解費用
1. 和解費用は以下の費用から構成されています。
a. 本規範第8条に規定した運営管理費。
b. 和解人への合理的な報酬。
c. 和解人の移動費およびその他の費用。
d. 当事者もしくは和解人から申し出があり、それに対して各当事者の合意を得た証人の移動費およびその他の費用。
e. 当事者もしくは和解人から申し出があり、それに対して各当事者の合意を得た専門家のコンサルティング費および通訳費用。
2. 上記費用は、当事者間で別段の合意がない限り、各当事者が均等に負担します。一方当事者の申し出に起因するその他の費用は全てかかる当事者が自己負担します。
第18条: 和解費用の支払手続
1. 当事者間での別段の合意がない限り、各当事者は本規則第17条第1項に規定する費用について同額を仮払いする必要があります。 支払方法は次の通りです。
- 和解申請書を提出した当事者は、調停手数料の50%を仮払いしなければなりません。
- 和解を受け入れる場合、和解申請書を受領した当事者が和解費用の50%を仮払いしなければなりません。
- 各当事者がPIACに和解申請書を送付した場合、当事者はそれぞれ和解費の50%を支払います。
2. 和解手続において、PIACは追加金額を支払う必要な理由を明示した場合、各当事者に同額を支払うように要求できます。PIACの通知受領日から30日以内に両当事者が全額が支払われない場合は、本規則の第15条第5項に従って和解が終了します。
3. 仲裁手続終了後、PIACは仮払い費用を計算し、残りの未使用額を当事者に返済します。
第19条: 仲裁または裁判所における仲裁人の責任
当事者間で書面で同意しない限り、和解人は訴訟内容が自身が参加した和解手続の対象であった場合、仲裁機関または裁判において、いかなる当事者の仲裁人または代理人、証人または弁護士として行動してはなりません。
第20条: 仲裁または裁判手続における証拠の認識
いかなる形であれ、当事者は紛争に関連する訴訟の内容が和解手続の対象であっても、任意の仲裁機関または裁判所における訴訟の根拠または証拠として使用しないことを誓います。
1. 和解手続中に触れた内容の録音・録画・撮影・記録。
2. 紛争解決に関する相手方当事者の見解または提案。
3. 和解手続中の相手方当事者の承諾。
4. 和解人による提案。
5. 和解人が提案した紛争解決に対する一方当事者の受諾